ベトナム北部(バクザン省)で良質な堆肥を製造している、堆肥工場を見学してきました!

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Xin chào(こんにちは)。VietAgriの徳嶺です。

とあるご縁で、ベトナム北部の「バクザン省(Bắc Giang)」を見学させていただく機会がありましたので、今回はその様子をレポートしたいと思います!

この堆肥場は、アジア循環農業支援プロジェクト「Green Earth Together」を共同して推進している日本企業「エンザイム株式会社」と「株式会社 花ごころ」が、ベトナムのバイオテクノロジー企業である「BioSpring」と協力して運営しています。今回は、BioSpring社のAnhさんガイドの元、写真のような大所帯で見学に行きました。

写真は左上段から、BioSpring社のHoangさん(堆肥製造責任者)、Anhさん(事業責任者)、花ごころ社の向さん(エコ農業支援・SOFIX診断士)、BioSpring社のDucさん、花ごころ社の小塚さん(代表)、下段右から西部農産ベトナムの板橋さん(栽培技術)、そしてVietAgriから徳嶺、宮里。

Green Earth Together とは?

少し前述しましたが「Green Earth Together」とは、腐植土を活用した事業を行う「エンザイム株式会社」と園芸肥料/用土の製造販売事業を行う「株式会社 花ごころ」が共同して行なっているプロジェクトです。

ベトナムでは、今回ご紹介する堆肥製造プロジェクトの他にも、オーガニックフルビックシュリンププロジェクト等を行ってらっしゃいます。また、ベトナム以外のアジア各国でも、”人と地域を支える”というコンセプトの元、循環農業を支援を行なっています。

画像:アジア循環農業支援_getholding Facebookページより引用

堆肥場までハノイから約2時間半

朝7:30にハノイ市内を出発して、車で約2時間半。バクザン省に到着です。バクザン省を車で走っていると、大型のショッピングセンターなどもあり、とても活気が感じられました。特に農業が盛んな地域だそうで、パイナップルやライチなどがよく知られているそうです。

日本・ベトナムの技術を取り入れた堆肥場

堆肥場は、市街から少し北向けに走った場所にありました。こちらが堆肥場です!

堆肥場の仕組みを堆肥製造責任者であるHoangさんに案内していただきました。実は、Hoangさんは、私と同い年(1990年生まれ)で、日本語・英語が堪能。さらに、前職は大手日本企業のエンジニアで、現在は、ベトナムで良質な堆肥を作り、安全で高品質な野菜を増やすべく、我々が日本で勉強していた科学的な有機農業手法(BLOF理論)を含め、様々な農業技術書を読みながら独学で学んでいるという優秀な方です。

私たちはBLOFを座学と実践で学べる「とくしま有機農業サポートセンター」で学びましたが、特に堆肥製造技術は、化学性・生物性・物理性だけではなく、エアレーション設備の設計や温度管理、また材料によっても最適値が変わりますし、私達もまだまだ勉強中なほど。そんな技術を、花ごころさんの支援や、本で学び、実践している点にとても感銘を受けました。

堆肥製造の行程

堆肥は、木質原料(主に木材の端材等)と鶏ふんから作られています。

この堆肥場は、バイオマスの製造工場に隣接しています。工場では、木材を粉砕・圧縮してバイオマスチップを製造しています。運ばれてきたばかりの木材はこんな感じです。

これを何度か粉砕・加工してバイオマスチップが作られるのですが、粉砕した木材の一部が堆肥の原料となります。また、堆肥の切り返しや運搬に使う重機も、元々このバイオマス工場で使われていました。原料や機材をうまく有効活用して、堆肥場が作られているので、生産コストが抑えられ、農家が購入しやすい価格で堆肥を販売することができます。

堆肥場は、大きく第一ピット、第二ピット、保管エリアに分かれています。第一ピットでは堆肥の製造行程の初めである「一次発酵」、第二ピットでは次の製造行程である「二次発酵」をそれぞれ行えるようになっています。


堆肥の山の上から撮影

それぞれのピットの床には、エアレーションパイプが配置されています。空気を送ることで温度を変化させ、微生物の活動をコントロールしたり、嫌気状態による腐敗を防ぎます。

ここに積まれている堆肥は、二次発酵中のもので製造開始から約45日程度が経ったもの。かなり温度が上がっていて、少し手で掘り進めると湯気が出ています。

堆肥づくりは、温度と水分のコントロールがとても難しいのですが、センサーを導入したり、日々の反省点も踏まえながら管理をしているそうです。

試しに握ってみると、少々粗い繊維はあるものの、鶏糞の嫌な匂いも無く、ふかふかとしていて、土壌の物理性の改善や長期的なアミノ酸の供給には凄く良さそうに思いました。

個人的に驚いたのは、CN比やNPKという言葉がでてきたことでした。

通常、日本の農業資材はCN比やNPKの比率が明記されており、農家はそれを参考にして施肥設計をすることができます。ですが、ベトナムではまだそういった手法が一般的ではありません。肥料店の店主さんからは「これは有機肥料だからNPKは入っていない」といわれたこともあります。NPK≒化成肥料という認識のようです。

そんな中、彼らは、作ったものをきちんと検査にかけて、NPKやミネラル量を把握し、堆肥として最適なCN比を目指した堆肥作りを進めています。まだまだ課題は多いそうですが、回数を重ねるごとに改善して、よい堆肥になると期待しています。

BioSpring社の事業責任者Anhさんにインタビュー

Q:堆肥は、どのような人向けに販売するのですか?

ー 堆肥は、ハノイ近郊の野菜生産者向けに提供する予定です。現在、実際に野菜を生産している農家さんに堆肥を提供し、試験栽培を行っています。実験結果や事業計画にもよりますが、大体6,000ドン/キロ程度で販売する予定です。(発注最小量は、1トン程度を予定)

Q:今後のビジネス展開を教えてください。

ー 顧客が納得できる良い堆肥ができれば、まずはバクザン省内で安定的に生産できるようにしていきたいです。年間6万トンの生産を目指しています。また、バクザン省以外でも、同様の堆肥製造モデルを展開していきたいです。ベトナムの農家も、化成肥料に頼るよりは堆肥を使ったほうがいいと分かってはいます。しかしながら、どの堆肥がよいか分からず使えないという状況です。

Q:このプロジェクトの特徴はなんですか?

ー 我々の堆肥の特徴は、安定した品質と低コストであることです。特にベトナムでは、コストが高すぎると、いくら良いものでも農家が導入できません。また、堆肥販売だけではなく、栽培や販売支援等のコンサルタントも行い、ソリューションを提供することが大切だと考えています。

堆肥製造の技術は、日本のBLOF理論を参考にしています。我々BioSpringは、ベトナム国内でもトップのバチルス菌を扱う企業です。我々が得意とするバチルス菌も活用して堆肥製造を行っています。日本の技術とベトナムの技術を組み合わせて、堆肥づくりをしているのも大きな特徴だと思います。

堆肥製造事業をスタートさせたばかりですが、今後は土づくりから販売までの野菜生産チェーンを作っていきたいと考えています。まだまだ道半ばで、やるべきことは多いです。

インタビュー動画はこちらから。

感想

まず、ここベトナムで高いレベルの堆肥が作られている事に、とても驚きました。微生物の活用やエアレーションによる温度管理など、私が日本で見てきた堆肥製造の技術を、ベトナムで実践していて、感銘を受けました。野菜の栽培において、土づくりは本当に重要で、特に「堆肥」はそのキモとなる資材です。

私達はベトナムに来て約1年が経ちますが、これまでに見てきたベトナムの農家さんでは、「堆肥」という概念がまだまだ浸透しておらず、化成肥料や農薬に頼った栽培をしているケースが多い印象がありました。しかし、Anhさんのお話を伺うと、農家の中でも堆肥を使うことへの関心は高まっているようでした。そういった中で、この堆肥場の存在はとても大きいと思います。

地域資源や環境をどのように活用するかが、農業のポイントでもあります。例えば、私達が農業を学んだ徳島県小松島市では、しいたけの菌床栽培が盛んで、その廃菌床を活用した堆肥を地域の農家は使っていました(堆肥場訪問記事)。

徳島県小松島市にあるしいたけ廃菌床を利用した堆肥場

地域が違えば手に入りやすい資材も変わってきます。バクザン省のこの堆肥場では、鶏ふんと木材を原料としていましたが、プロジェクトを別地域で展開するときには、その地域にあった資源を使っていくとのことでした。各地域に高品質の堆肥が供給される仕組みができれば、ベトナムの農業ももっとよくなると思いました。

そして、なにより感動したのは、微生物・建築・堆肥製造技術・土づくり等、様々な分野のエキスパートが国をまたいで集結し、堆肥作りを進めていること。国レベルで行うことももちろん意義はありますが、こうして現場レベルで力を合わせて事業ベースで本当に良いものを作ることができれば、ベトナムでも日本並に安全で美味しい野菜が食べられる日も、そう遠くないかもしれません。

今回は、見学をさせていただき、ありがとうございました!

〜お知らせ〜

ベトナム情報メディア〜VietAgri(ベトアグリ)〜では、ベトナムの農業に関する情報を収集・配信しています。ベトナムで活躍する日本人の情報や、資材情報など、ご存知のことがあれば、お気軽にお知らせください。お問い合わせは、[こちら]から。

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TokumineAkari

1990年生まれ。大学時代に、沖縄の学生ビジネスコンテストで2年連続最優秀賞。Starup Weekend OkinawaやPOStudyなどのイベントを運営。沖縄県内のIT企業を経て、フリーランスのWEBディレクターとして独立。半年の東京滞在の後、東南アジアを巡る旅へ出発。2016年3月から徳島に移住し、有機農業を学ぶ。2016年11月からベトナム・ハナム省在住。ITと農業、2足のわらじ履いてます。